コラムを掲載いたしました。
今週のコラムは、生徒指導部主任 芹川先生が担当します。
今週のコラムは、生徒指導部主任 芹川先生が担当します。
『言葉の力』
先日、令和元年度熊本県高等学校総合体育大会が開催された。毎年開催されるこの大会はインターハイ県予選会として、部活動生にとっては集大成の大会でもある。また、今年のインターハイは南部九州総体ということで、剣道競技は18年ぶりに熊本開催が決まっていた。
そして、18年前を思い出す。当時、高校3年生だった私は団体戦の出場権を逃し、個人戦のみエントリーすることになっていた。大会当日は地元開催のため、親戚や中学小学時代の恩師や友人も応援に駆けつけてくれた。高校進学を決める時、「日本一になるために地元を離れます。」と宣言して中学校を卒業した私が有言実行するチャンスがこの日であった。
全身全霊で臨んだ大会は個人3位という結果で幕を閉じた。中学校の時までは九州大会にも全国大会にも出場したことの無い私にとって、初の全国入賞となった。団体戦の前に個人戦が終わったので、閉会式までの間に時間があり、応援に駆けつけてくれた人達に御礼を言いたく観客席に行った。親戚や恩師、友人も「全国で3位は凄い、頑張ったね。」と声を掛けてくれた。すると、地元の同級生が一人で入り口付近に立っていた。私が駆け寄り「応援に来てくれてありがとう。」と伝えると「全然駄目たい。勝也君は日本一になると約束して地元を離れたのに、3位たい。」と本当に残念そうな顔で返答し、帰って行った。この言葉を聞いて私は頭をハンマーで殴られたかのような衝撃を受けた。
おそらく、私の顔は全国3位に満足して知り合いに挨拶をして回り、「頑張ったね。」と褒めて貰うことを要求していたのだろう。本当に自分自身を情けないと思ったし、この同級生の一言で私は初心に戻ることができた。この時には進学する大学も決まっていたが、もう一度、本気で日本一を狙える大学へ進学したいと熱望し、決まっていた大学を辞退して進学先を変更した。(当時この時期に変更するのは御法度だったが…)
あの一言を発した地元の同級生は、剣道経験者でもなく、ただのクラスメイトである。しかし、中学卒業時に私の目標を聞いて言葉をプレゼントしてくれた。その言葉が本校の道場にも掲げてある「楽をすることを考えたとき、夢はくずれる」という言葉である。絶対に夢を諦めてはいけないことを教えてくれた。そして、私が大学生になっても応援を続けてくれて、大学日本一になる瞬間を日本武道館で見届けてくれたが、その日は会場で会うことができなかった。その日まで電話や手紙のやりとりをしていたが、私の夢を見届けて以来、この同級生とは今も音信不通である…。
言葉の力は本当に大きい。今年の高校総体でも監督からの言葉、仲間からの言葉、家族からの言葉など様々な素晴らしい声掛けがあったのではないだろうか。時には人生を変える一言もあるだろう。今後も人との出逢い、言葉との出逢いを大切にして欲しい。